妊婦さん対象のRSウイルスワクチンの定期接種が始まります
- 2026年3月9日
- ワクチン接種
妊婦さん向けのRSVワクチンについて、大切なポイントを整理して解説します。お腹の赤ちゃんを守るための新しい選択肢について、一緒に確認していきましょう。
① 妊婦対象のRSVワクチン定期接種開始が始まります
2024年より、お腹の赤ちゃんを守るための新しいワクチン(製品名:アブリスボ)が日本でも承認され、接種が始まっています。
本年4月から**定期接種(公費助成の対象)**としての運用されることになり、これにより、これまでは全額自己負担だった接種が、より受けやすい環境となります。当院でも接種が可能となります。
② なぜRSVワクチン接種が必要か
- RSV母子感染のリスク
RSウイルス(RSV)は、多くの大人にとっては「ひどい風邪」で済みますが、生後数ヶ月の赤ちゃんがかかると非常に厄介です。その理由として
経胎盤感染が起こりうる:お母さんが妊娠中にRSVに感染すると胎盤を通しておなかの中の赤ちゃんへ感染すること(経胎盤感染)が想定されています。
重症化しやすい: 赤ちゃんは気道が狭いため、呼吸困難(細気管支炎)や肺炎を起こしやすく、入院が必要になるケースが少なくありません。また感染すると、肺の成長が妨げられ、成長しても肺の機能が健常児と比較し低く、生活や運動にも制限が加わる可能性があります。
守る手段がなかった:これまで、生後すぐの赤ちゃんに直接打てるワクチンはありませんでした。
お母さんが妊娠中にワクチンを打つことで、お母さんの体内で「抗体」が作られ、それが胎盤を通じて赤ちゃんにプレゼントされます。これが**「母子免疫」**です。
- RSVワクチンの予防効果(MATISSE試験の概要)
このワクチンの効果は、世界規模で行われた「MATISSE試験」という大きな臨床試験で証明されています。
対象: 約7,000人の妊婦さんとその赤ちゃん。
結果: 生後90日以内の赤ちゃんの重症なRSV呼吸器疾患を約82%減少させることが確認されました。
持続性: 生後6ヶ月時点でも約69%の感染の減少効果が続いていました。
③ 予防効果82%とは「18%は発症する」という意味?
ここが少し勘違いしやすいポイントですが、「18%の人がかかってしまう」という意味ではありません。
ワクチンの有効率82%とは、**「ワクチンを打たなかったグループの発症率に比べて、打ったグループの発症率が82%少なかった」**という意味です。
たとえ話で解説:
もしワクチンを打たない100人の赤ちゃんのうち10人が発病するとします。有効率82%のワクチンを全員が打つと、重症化する子は**1.8人(約2人)**にまで減る、ということです。つまり、リスクを劇的に下げてくれる強力な盾になります。
④ 有害事象(副反応)
どんな薬やワクチンにも副反応の可能性はあります。主なものは以下の通りです。
お母さん側: 接種部位の痛み、腫れ、筋肉痛、疲労感など。これらは通常のワクチンと同様、数日で治まるものがほとんどです。
気になる点(早産について): 臨床試験において、ワクチン接種群と非接種群で早産率に統計的な有意差(明らかな差)は認められませんでしたが、安全性を考慮し、日本では**妊娠24週から36週(推奨は28週〜36週)**の間に接種することとされています。
新しいワクチンのため、ご自身の体調やかかりつけの産婦人科の先生とよく相談して決めるのが一番です。またご自分が接種の対象となるかは接種日が妊娠第何周に当たっているかが重要です。妊娠週数のご確認をお願いします。